今回分 講義への意見・質問



1)講義の内容について
Q:' メトリックという言葉の定義がよく分かりません。'

-->足し算引き算できるような尺度のことをメトリックといいます(できない尺度はノンメトリック)。超初歩的なところです。プリントの最初の方を見直して下さい。

 

Q:' いろいろな手法を知るにつれて、自主研究では、どの手法を用いるのが一番良いのか 分からなくなってきました。また、だんだんと最終報告の日が迫ってきているので、かなり焦ってます。'

-->プリントのどこかに、手法と尺度などについて入れておいたはずです。適切なのを選んで下さい。

 そろそろfinishですから、あせりつつもデータとの対話を楽しんで下さい。

 

 

Q:'今日のテーマの因子分析を学びながら、自分の研究テーマ(日経プリズム)の理解も 深まりました。ただ「評価項目のリストアップ」と「因子の集約に関する解釈」が問題となりそな分析方 法ですね。でも、直接見えないところを推測するというところにとてもひかれました。 '

→そのとうりですね。成長に関する変数・項目を入れなければ、因子分析しても、「成長因子」が出てくるはずはありません。そういう意味で、どのような変数を分析にかけるのかということが、非常に重要になります。

 なお、日経プリズムも、数年前までは、授業で教えた因子分析をもちいていましたが、2年ぐらい前からは、「共分散構造分析」という手法が用いられているようです。

 授業で教えた因子分析は、変数を入れて、それらの変数間の相関(もしくは共分散)の高さに基づいて、機械的に因子を抽出してくるものであり、結果がでるまではどのような因子が出てくるかわからないという意味で、探索的因子分析と呼ばれます。授業でコメントしたように、この手法は、仮説検定の枠組みにのっていません。よって、因子をいくつまでとればいいのかといったことについては、慣習によって決定されています。

 これに対して、「確認的因子分析」というものもあります。これは、測定にともなう誤差項について、正規分布を仮定することによって、統計的検定を可能にしたものです(授業で教えた因子分析については誤差項の話がでてこなかったことに注意)。

 上述の共分散構造分析モデルというのは、確認的因子分析および回帰分析をふくんだ上位モデルになっています。これによって、想定する因子に対して、測定された変数が適切か否かといったことや、因子の数、因子の間の因果(正確には相関?)関係の有無も統計的に検定できるようになっています。

 日経の企業評価の場合も過去はいろんな変数を(探索的)因子分析にかけて、見いだされた因子によって総合評価を説明するといった手順で分析されていたようです。しかし、少なくとも96年度の評価については、共分散構造分析が使われているようです。つまり、企業評価の諸側面を表す因子をあらかじめ想定し、それらに対応する変数・データを集めて、確認的因子分析を行うと同時に、それらの因子と総合評価との関連性をも検定するという手順になったようです。(日経新聞1997年3月17日を参照:96年度の企業評価の結果)。

 ちなみに、日経カスマというのもあるようです。こちらは、共分散構造分析ではなくて、因子分析などが用いられているようです(日経新聞1997年8月23日を参照:97年度の企業評価の結果)。

 ところでプリズムとカスマはどう使い分けられているのですかね?

 

 なお、sasでは、proc calisというプロシジャで共分散構造分析が使えます。ややこしいので教えませんが。

 共分散構造分析については、以下の本がありますので、興味があれば読んでみて下さい。

 豊田ら?「因果関係を探る統計学(題名ふたしか)」講談社ブルーバックス

 豊田秀樹(1992)『SASによる共分散構造分析』, 東京大学出版会→高度すぎて読めない。

  ↑プリズムモデルの開発に関わった方(上述の日経新聞1997年3月17日を参照)。

 



2)講義の進め方について
Q:' 今日はいっていることが1限と似ていてわかりやすかった。'

Q:' 1限と同じことについてだったので、良く分かりました。'

Q:'1限でも因子分析を勉強したばかりなので、因子分析の概念は理解した '

Q:' 1限と一緒にとっているので楽でした。'

Q:'1限で因子分析についてやったからだと思うのですが、とても分かりやすかったです。 因子分析がどのようなものか、という概念が分かっていたところで具体的な方法や、分析結果の読み方を聞いたので、内容がはっきりしていた気がします。予習がなぜ大事かということを再認識しました。 '

Q:' 今日のところは理解するのが難しかったです。私には進みが早かったような気がしま した。'

Q:' 今日はわかりにくかったです。因子を新たに設定するというところが特に分かりませ んでした。'

-->市場調査論を履修していない人にとっては難しかったかも知れませんね。

  自分で分析・解釈するとよくわかる、と期待しております。

 

 

Q:'因子分析はとても興味深い分析だと思いました。 '

Q:' 今日は、講義のスピードもそれほど早くなく、内容も大体理解できた(と思う)ので 良かったと思います。'

Q:' 今日はみんなと同じ程度に進めたので嬉しかったです。今日のはとても良く分かりま した。動かしかたが分かってくると、先生の話も聞く余裕が出てきたので、なんとかなり ました。'

→だんだんSASの使い方にも慣れてきたのでしょう。

 私が教える手法ものこり1つになりました。

 

 

Q:'知能指数の例で、因子分析の意味が超よくわかりました。(と、自分では思う。)今日の講義はとても興味深い内容でした。マーケティングや社会学は基本的にヒアリング のような調査方法がとられますが、被調査者の発言は必ずしも真実を写し取ったものでは ないためにその背後にあるなにものかはわからない因子を発見することが必要になるとい うことでしょうか。 経済学と社会学・商学のデータ数値の扱い方のセンスの違いがわか り、なにかすごい分析手法を学んでしまった気にひとりでなっています。ほんとうにおも しろかったです。'
→知能、関与、知識、態度など、直接観測できない潜在変数(構成概念)を扱う分野では、重宝されている手法です。所得、利子率、価格など直接観測される変数を扱う経済学では、このような手法についてのなじみはないようです。

 この他にも以前の講義で言いましたが、有意水準を10%にするか5%にするかといった基準も、学問分野・研究対象によってことなってきます(なお、有意水準を10%にするか5%にするかといった恣意性を除去するために、情報量基準という指標をもちいてモデルの優劣を比較しようという考えかたもあります)。

 統計学・数学モデルというのはメタモデルですが、利用する分野によって、それへの評価、使い方が異なってくるというのが人間的で面白いですね。



3)その他


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